オフショア開発の課題はこうして解決!失敗例から学ぶその対策とは?
近年、開発コスト低減や人材の確保にメリットのあるオフショア開発が人気ですが、残念ながらそのメリットをうまく生かせなかったという失敗例も聞かれます。オフショア開発を実施する場合に、注意しなければならない課題には一体どのようなものがあるのでしょうか? また、それはどのように解決すればよいのでしょうか? 今回は失敗例からオフショア開発の課題を明確にし、その対策をご紹介します。
オフショア開発市場の動向
はじめに、近年人気となっているオフショア開発の動向について確認しておきましょう。
オフショア開発を活用している業種
日本からオフショア開発を活用している業種には、ソフトウェア開発、Webシステム開発、スマートフォンアプリ開発、Webサイト制作、ゲームアプリ開発、VR開発などがあります。以前からIT系の業種にオフショア開発は人気でしたが、近年ではオフショア委託先の技術力向上を背景に、AIやIoTに関わる高度な開発も委託されています。
オフショア開発の人気国
オフショア開発の委託先は、東南アジアや南アジアの国々が人気となっています。人気の1位はベトナムで、以下フィリピン、インド、バングラデシュ、ミャンマーと続きます。
ベトナムの開発コストや物価は、バングラデシュやミャンマーにはかないません。それにもかかわらずベトナムが1位となっている理由としては、IT系の開発技術者が豊富なこと、技術力が高く品質が安定していることなど、品質面で他国よりも勝っている点が挙げられます。つまり、コストと品質のバランスがとれていることが、ベトナムが人気の理由と言えるでしょう。
→ ベトナムでのオフショア開発については、こちらの記事もご参照ください。
オフショア開発の目的
日本の企業がオフショア開発を利用する主な目的は、コスト削減と優秀な開発人員の確保です。コスト削減に関しては、クライアントからの要望がオフショアである場合も多くなっているようです。
また、委託する国を選別する場合には、コスト削減や人材の確保だけでなく、政情や治安などのカントリーリスク、国民性などが総合して評価される傾向にあります。
→ オフショア開発について、こちらの記事でさらに詳しい解説をご覧いただけます。
オフショア開発の失敗例
上記のようにIT系の開発で人気のオフショア開発ですが、思ったほど効果が上がらなかったという声を聞くこともあります。どのような失敗例があるのでしょうか?
単価は安いが工数が多く、思ったほどコストを低減できない
開発コストを試算するにあたっては、つい単価に目がいきがちですが、工数についても注意が必要です。最初に提示された単価ではコスト削減効果が見込めたものの、ブロックごとの開発工数が多くなってしまい、結果として開発費の低減につながらなかったというケースもありえます。
品質が悪く手戻りが多く発生、追加工数(修正の工数)も請求された
こちらも上記と同じような状況ですが、品質に起因した失敗例です。最初に提示した仕様と成果物の仕様、もしくは品質の条件が合っておらず、修正を依頼したところ仕様変更、もしくは仕様追加だと言われ開発費が増えてしまったケースです。
進捗状況が報告されず、スケジュールが全く守られなかった
開発の進捗報告会議などの開催には応じるものの、聞かれた部分以外は進捗報告がなく最終的には開発スケジュールが大きくずれ込んでしまった、という例です。スケジュールの遅れに対するリカバリー策なども示されず、報告がないことに関しては「聞かれなかったから」と回答されるケースもあるようです。
開発のミスを責任回避された
「成果物が仕様と違う」、「検査項目に対応できていない」などと開発のミスを指摘すると、「こちらの責任ではない」と責任回避されてしまう場合があります。このような場合は、修正依頼に対して追加工数、すなわち追加費用が発生します。
残業や休日出勤でリカバリーを要請したが断られた
遅れている開発スケジュールに対して、残業や休日出勤でのリカバリーを要請しても断られる場合があります。このような対応は、責任の所在を明示したり追加費用を提示したりしても、ほとんど変わることがありません。
開発の途中で委託先と連絡が取れなくなった
開発の途中で、先方の開発責任者のみならず委託している企業と連絡が取れなくなってしまう例です。このような事態は、新興企業や規模の小さい企業に開発を依頼した際に起きることがあるようです。
オフショア開発の課題とは?
上記のような失敗は、主に以下のような課題に対して解決策を講じていないことが原因となっています。
コミュニケーションが難しい
オフショア開発時に、一番の課題となるのが言葉による壁でしょう。うまくコミュニケーションができないと細かい仕様や修正指示がうまく伝わらず、手戻りの発生や追加コスト発生の原因にもなります。また、日本人と感情表現が違う場合があるので、こちらの話を理解したのかどうか反応がよくわからないこともあります。
国民性の違い
開発スケジュールが遅れているから残業や休日出勤をして何とか間に合わせる、という感覚は日本以外ではあまり一般的ではありません。ほかにも、明確に証拠を示さなければ自分の間違いを認めない、リーダー以外の指示には従わない、という国民性を持つ国もあります。
文化・商習慣の違い
それぞれの国には、国家主義(社会主義や共産主義など)による文化や政策の違いがあります。加えて、日本人が考える以上に、外国人は国家主義や宗教を尊重する場合もあります。国民の祝日や旧正月には働かない、国や政治の方針が民間企業にも強く影響するなど、文化の違いはビジネスにも大きく影響します。
また、商習慣にも違いがあり、商店や公共機関であっても昼休みが長いなど非効率さが感じられる場面もあることでしょう。取引も日本のように手形や延べ現金という慣習はアジア諸国では少なく、基本的には現金のみとなります。
物理的な距離と時差
日本と東南アジア、南アジアの国々とは時差があり、すぐに連絡が取れない場合があります。また物理的にも距離があるので、郵便物やサンプルを送るのにも時間がかかります。送るものによっては通関が必要になることも意識しておく必要があるでしょう。
品質やセキュリティに関する感覚の差
国民性の違いにも通じますが、品質の基準やセキュリティに関わることにも感覚の違いがあります。たとえば、著作権の考え方を理解していないがために、プログラムのコピーが横行している状況はこれに当たります。開発者全員が、日本人と同じような仕事に対する感覚を持っているわけではありません。
委託先の選定ミス
オフショアを受託する企業には、設立から間もないものも多くあります。資本や経営基盤がしっかりしていない企業のなかには、コストの低さだけを売りにしている場合もあるので注意が必要です。
気をつけるポイントと対策
オフショア開発の委託にはいくつかの課題がありますが、それぞれ事前に適切な対策を行うことによって解決できるものばかりです。最後にオフショア開発を委託する際に気をつけるポイントと対策を説明しておきましょう。
コミュニケーションの課題に対応する
言葉の壁を解消するには、委託元と委託先の国双方の言語に堪能なブリッジSEなどをチームに入れるという方法があります。また、仕様を伝える際には、曖昧さを極力省き指示を明確に表現することがポイントとなります。必要に応じて、内容がうまく伝わるようにテキストではなく図で資料を作ることも効果的です。
→ ブリッジSEについては、こちらの記事もご参照ください。
国民性の違いや考え方、商習慣の違いに対応する
その国の事情や文化、カントリーリスク、商習慣はあらかじめ調査しておき、日本のチーム内で情報共有しておきましょう。また、その国の事情に詳しいオフショア開発専門の会社に仲介を依頼することも効果的です。
開発時には現地人のリーダーを育成し、業務の指示は基本的にリーダーに伝えます。リーダーは、現地人であることが重要なポイントです。残業や休日出勤の依頼も、現地人のリーダーを経由するとうまくいくことが多いようです。
時差と距離感に対応する
物理的な距離を縮めることはできませんが、オンライン会議を利用し、定期的な会議予定を決めておけば伝達事項をスムーズに伝えることができます。また、時差があっても、共通で使えるツールなどで進捗管理や情報共有を行えば、それぞれのビジネスタイムに作業を進めておくことができます。
品質やセキュリティを確保する
開発のスタートに先立って、品質やセキュリティに関する事前教育を実施しておくようにしましょう。メンバーの入れ替えにも対応できるよう、教育は定期的に行う必要があります。品質を確保するために、あらかじめチェックリストを作成し、納品前には自己チェックを行わせます。また重要な事項には確認のサインをさせるなど、責任を明確化させておきましょう。
実績のある会社を選ぶ
オフショア開発を委託する場合には、数社の開発会社に相談することもポイントのひとつです。委託先選定のミスを防ぐためには、複数の会社から見積りをもらい、実績が豊富で日本語の通じる会社を選ぶことが大切と言えます。
→詳細については、「成功するオフショア開発会社の選び方」もぜひご参照ください。
この他にも、以下の記事ではオフショア開発成功のポイントをまとめてあります。オフショア開発をご検討中であればぜひご覧ください。
→「【完全保存版】オフショア開発を失敗させないための3つのコツ」
まとめ:オフショア開発に実績豊富な会社と協業することで失敗を回避
上記のように、オフショア開発での失敗を避けるためにはいくつかの注意点があります。ただし、これらすべてを自社だけで対策する必要はありません。開発コストを確実に低減させ、優秀な人材を確保し安定した開発を行うためには、オフショア開発に豊富な実績を持つ会社と協業するのが近道です。現在海外でのオフショア開発を考えているなら、検討してみてはいかがでしょうか?
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