オフショア開発における5つのデメリットと4つの対策
ITを活用したビジネスモデルの変革を目指したDXが声高に叫ばれています。新型コロナを背景に非接触ビジネスが求められる状況もあります。これらを背景にIT需要の高まりには目を見張るものがあります。しかし、そうした高まる需要にIT人材の供給が追い付いていません。人口減による人手不足も相まって、IT分野でのエンジニア不足は深刻な問題となっています。
こうした背景の中、不足するIT人材を海外に求める「オフショア開発」がますます注目されだしています。
前回、【実体験】オフショア開発のメリットは?3つのメリットをヒアリングでオフショア開発におけるメリットを公開しました。「エンジニア不足の解消」、「コストの大幅な削減」というメリットを謳歌し、オフショア開発をうまく活用して、ビジネスを大きくする事例も多数出てきています。
しかし、その一方で「なかなか成功しない」とデメリットを語る声を聴くこともあります。
本記事では、オフショア開発のデメリットとしてよく聞く内容をNTQで分析し、その対策まで含めてお伝えしていきます。少しでも、オフショアでのITシステム開発の手助けになれればと思います。
■オフショア開発の5つのデメリット
①小規模開発ではコストメリットが効きづらい
最もデメリットとしてよく聞く問題は、思ったよりもコストを削減できないことです。
オフショア開発の場合、開発エンジニアの人件費以外にも費用がかかります。例えば、専門的な知識を持ち橋渡し役としてプロジェクトを推進するブリッジSEや、日本語から現地語に翻訳し、業務を推進するコミュニケーターが必要になります。
こうしたオフショア開発で必要になる特殊な人員はかかることで、小規模な案件だと、削減できた人件費以外の費用がかさんでしまい、当初の想定よりもコストメリットが出ないことがあります。
②言語の違いから生じるデメリット
次に、言語の壁によるコミュニケーションの難しさとしてのデメリットです。
オフショア開発は拠点が海外であるため、物理的な距離の遠さから、直接打ち合わせを行うことができません。こうしたコミュニケーションの難しさから、設計書の内容を理解させ、開発の進捗を管理するのに時間がかかりすぎるということがデメリットとして言われがちです。
また、言語も異なるため日本語独特のニュアンスが伝わらず、意図しない完成品が生まれることもあります。日本語のニュアンスがうまく伝わらないことで、求めている品質がうまく伝わらず、高品質なシステム開発を担保できないという声が、デメリットとして挙げられています。
③時差から生じるデメリット
オフショア開発は基本的に海外に発注し業務を進めることを指すため、そもそも時差の違いが生じます。
自社内やオフショア開発先で、何かトラブル等の発生や仕様の修正・確認等、すぐに確認したい事項が生じたとしても、相手方が勤務時間外の可能性もあり、レスポンスが遅くなる場合もデメリットとして挙げられます。
日本が発注する場合、そのオフショア開発先をアジア圏内とすれば、時差が小さく済むためそういった点でもアジア圏内でのオフショア開発が注目されている理由の一つでもあります。
④文化の違いによるデメリット
文化の違い、更に細かくいうと「業務を進める上でのスタンス」が日本と他国で異なってくるため、いわゆる阿吽の呼吸のような業務の進め方が特に業務開始時期では、難しい点もデメリットといえます。
たとえ日本人同士で、それほど阿吽の呼吸のような意思疎通をしながら業務をしている認識がない場合でも、「ここまでが自分の業務の範囲」と無意識に考えている場合がありそこから生じる失敗も少なくありません。
また、学校教育の内容の違いや普段使われているインフラの違い等々、日本人にとっての常識が海外エンジニアには非常識になることもあります。
こうしたいわゆる常識のズレから開発するシステムの前提が食い違い、コミュニケーションを取らなければスムーズに開発が進まないこともあります。結果、ズレを修正する工数が必要となり、単発で小さな案件の場合、コストメリットがなくなってしまう可能性があるというデメリットがあります。
⑤ビジネス習慣の違いによるデメリット
日本の仕事スタイル、文化が海外では受け入れられない可能性があるというのもデメリットです。例えば、日本ではサービス残業をしてでも納期に間に合わせようとすることがありえますが、オフショア開発先ではその常識は通用しません。また、いわゆる報連相が習慣化していないことも多く、物理的な距離も相まって、コミュニケーションだけでなく進捗や品質管理の難易度も高くなります。
日本とやり取りの多いオフショア開発企業では習慣化しているケースもありますが、その中身は日本人の考えている深さの内容を伴っていないケースが多々あります。事実、報告通りに進捗管理を行い問題がないようでも、実際には品質に問題があるケースも多いです。
こうした商慣習のズレからくる問題により、計画よりも進捗が遅れたり、納期に間に合わなかったりするケースが生じ、それらの事例がデメリットとして語られることが多くなっています。
■4つのデメリット対策
①10人月以上の案件を選ぶ
オフショア開発を実施する際は、コストの内訳を確認してトータルの費用を試算しましょう。先述の通り、オフショアの場合は開発工数だけではなく、ブリッジSEやコミュニケーターの工数もかかります。それらの工数を勘案すると、3人/月以下の案件では、コストメリットが薄まる可能性が高く、メリットを得るどころかデメリットとなってしまうこともあります。
一方で20人月を超えてくる案件では、日本側が慣れていないと管理の難易度が高く、管理工数が想定以上にかかってしまい、管理のために増加した分のコストがデメリットとして重くのしかかってきてしまう可能性もあります。
NTQの経験上、10人月程度の案件であれば、成功確率の高さとコストメリットの高さを両立できます。
②独立性の高い案件を選ぶ
他のチームや他社との連携が必要だと、コミュニケーションでの調整が難しくなります。
例えば、購買管理システムでは会計のような社内での連携に加えて、社外のシステムとの組み合わせを考える必要があるため、コミュニケーションは更に複雑になります。システム開発では業務フローをオフショア開発側に理解させることが必要となりますが、関係者が増えれば増えるほど、コミュニケーションのコントロールが難しくなります。
一方で社内の育成システム、勤怠管理システム、単独事業部で開発するMVP開発等は単独部門での検討で済みます。こうした単独の部門でコミュニケーションが完結するシステムを委託することでコミュニケーションに紐づくデメリットを抑えることができます。
③ラボ型開発で業務知識を覚えさせて、中長期的に使う
オフショア開発ではオフショア先と日本でのビジネスフローの違いを理解させてから、開発を行わせることとなります。同様のメンバーで関連する開発が複数回なされる場合、この学習のフェーズは二回目以降は不要となり、初回で要した学習の工数にかかるコストがその後の開発で薄まっていきます。また、それだけでなく、経験が蓄積されることで開発の生産性が上がります。
オフショア開発では、特定のエンジニアを囲い込むラボ型開発という形式の開発類型が選択できるため、中長期的なノウハウの蓄積とそれによるコストの低減が期待できます。
④コミュニケーションの内容を決めたうえで、可能な限り言語化する
日本では「全部言わないこと」が美徳と受け取られる場合があります。また、日本には、ツー・カーの仲、阿吽の呼吸ということばがある通り、何も言わなくてもこちらの意思が相手に通じていると思い込んでいる節があります。
しかし、これは外国人には通用しません。
そのため、何をどのタイミングで伝えるべきかを規定しておくことが効果的です。例えば、定例のミーティングでの報告事項、報告対象とすべき内容の基準設定を行うことで日系企業で普段なされるような報連相が実現できます。また、こちらが伝えたことを先方が理解できているかを確認するために、「どういう風に理解できたかを説明してください」と伝えて、相手の理解度を言語化させることも効果的です。
■まとめ
以上、オフショア開発のデメリット5点とその対策の4点をまとめました。
デメリットは、下記の5点でした。
・小規模開発ではコストメリットが効きづらい
・言語の違いから生じるデメリット
・時差から生じるデメリット
・文化の違いによるデメリット
・ビジネス習慣の違いによるデメリット
また、これらに対する対策は、次の4点でした。
・10人月以上の案件を選ぶ
・独立性の高い案件を選ぶ
・ラボ型開発で業務知識を覚えさせて、中長期的に使う
・コミュニケーションの内容を決めたうえで、可能な限り言語化する
デメリットに対する対策を含めてまとめましたが、それでもオフショア開発に不安がある方もいらっしゃるかと思います。
「やはりいきなりオフショアを始めるのは不安だ」、「いきなりラボは早すぎるかも」とお考えの企業様には、トライアルプランもご用意していますので、是非、詳しくはお問い合わせください。
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