AI(人工知能)とは?仕組みやビジネスの可能性を事例とともに解説
ビジネスの各分野でAI(人工知能:Artificial Intelligence)が注目されています。特に自動運転や医療分野、顔認識によるセキュリティ分野、AIスピーカーのようなスマート家電分野では、ここ数年で急速に発展・普及してきました。
日本の抱える人口減少や少子高齢化に伴う人手不足の解決手段として、あるいは新型コロナウィルス感染症をきっかけとしたニューノーマルな社会の形成など中長期な視点において、ビジネスにおけるAIの活用・普及は今後も存在感を増していくことでしょう。
ここではAIが注目される理由と、これからのビジネスに与えるインパクトについて解説いたします。
AI(人工知能)とはなにか
AIの定義
日本語で人工知能と言われるAIは、Artificial Intelligence(アーティフィシャル・インテリジェンス)の略称です。一般社団法人人工知能学会(※)では、AIという言葉の生みの親であるジョン・マッカーシー教授の言葉を「知的な機械、特に知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術」と翻訳して紹介しています。
AIは現在、「第3次AIブーム」と言われています。これは、過去に数回繰り返された、かつてのAIブームとは異なります。かつてブームとなったAIは、与えられた情報に対して最適解を導くものでした。現在のAIでは、ベイズ統計学や機械学習の実用化によって、ビッグデータ(数値やテキスト、画像、音声など大量のデータ)からコンピュータ自身が「自ら学ぶ」時代になったと言えるでしょう。
また、知識を定義する要素(特徴量)をコンピュータが自ら習得する深層学習(ディープラーニング、特徴表現学習とも呼ばれる)が登場したこともその特徴です。
以降は、現在のAIを表すキーワードである「学習」の仕組みについて見ていきます。
※ 一般社団法人 人工知能学会では人工知能の各分野で研究交流を行っています。人工知能(AI)の産業応用に関するシンポジウムの実施、会誌の発行、一般の研究発表のほか、招待講演などが主な活動内容です。
AIの仕組み
機械学習とディープラーニング
機械学習とは、データを分析する方法のひとつです。データを用いて「機械」(コンピュータ)が自動で「学習」し、データの背景にあるルールやパターンを発見する方法からこのように呼ばれます。特に近年では、大量のデータから学習した成果に基づいて「予測・判断」することが重視されるようになりました。
機械学習でもっとも重視されることのひとつは予測精度です。データの背景にあるルールが正しく説明できているかどうかだけではなく、結果としてより正しく予測できているかどうかが重視されています。これによって、従来の仮説検証型のデータ分析では見つけられなかった新しい発見や高い精度の予測モデルを構築することが可能になりました。
ディープラーニングはこの機械学習の機能をさらに推し進め、データの背景にあるルールやパターンを学習するために、深層的(ディープ)な構造で考える方法です。一般的なデータ分析では、入力データと出力データの関係を直接分析しますが、ディープラーニングは、そこに中間層と呼ばれる構造を設け、さらに多層化(深層化)することで、さらに深くデータの背景にあるルールやパターンを考えることができます。
ディープラーニングについて詳しくは、「ディープラーニングとは?わかりやすく仕組みと具体的な活用事例を紹介」をご参照ください。
強いAIと弱いAI
AIには「強いAI(汎用型AI)」と「弱いAI(特化型AI)」が存在します。強いAIは人間のような総合的な判断ができるAIです。あらかじめ人間が結果を考えてプログラミングしたり、そのためのデータを与えたりしていない場合でも、状況に応じてAIが自ら判断できることが、強いAIの特徴です。人間のように「想定外の状況に、過去の経験に基づいて学習、処理する」といった対応も可能になるとして期待が寄せられています。最終的なAIの到達点ですが、その理想の形は、現在まだ実現していないとされています。
これに対して弱いAIは、与えられた特定のタスクを自動的に処理するAIです。現在多くのサービスやシステムで実用段階にあるAIはこの「弱いAI」を指しています。弱いAIは、与えられた仕事に対しては自動的に処理ができる一方で、プログラムされていない、想定外の状況への対応はできません。つまり、人間の知性の一部分のみを代替し、特定のタスクだけを処理するAIです。囲碁のアルファ碁やiPhoneのSiriなどはこれに該当します。
AI技術とビジネスにおける活用例
AIと医療技術
AIが過去に蓄積された診断画像や健康診断の数値、各種の論文やデータ報告などの医療データを解析することで、病気の早期発見と適切な治療を見つけ提案することが可能になりました。人間では限界のある大量のデータ解析により、今まで見過ごされてきたさまざまな医療に役立つデータをピックアップできるようになりました。
実用化の例
米Amazonは、AIを使って患者の診療記録を分析することで、重要な情報を抽出するという新しいサービスを開始しました。医師や医療事務従事者がこれを利用することで、これまで手作業で行っていた処理から解放され、大幅な業務効率化を見込むことができるとしています。
Amazon AIにより診療記録を分析・標準化できるサービスを公開|The Medical AI Times
AIと自動運転
自動車の自動運転において、AIは運転にもっとも重要な認知のプロセスで利用されています。多くのデータを蓄積分析して認知プロセスで利用される人工知能は、画像処理の分野で力を発揮。車載カメラによって周囲を認知し、障害物や走行レーンを識別することによって、安全な自動運転が可能になります。
実用化の例
ホンダの出資するHelm.aiは、AI分野において「教師なし学習」に特化した研究開発を進めており、この技術が自動運転開発にイノベーションを起こすとされています。
「教師なし学習」で自動運転!ホンダも出資するHelm.aiの正体|自動運転LAB
AIと自動翻訳
AIは自動翻訳の分野でも活躍が期待されています。自然言語分野で文脈などを読み取り判断して、より文脈に沿った単語を選択することで、人が翻訳したような自然な翻訳をする自動翻訳の技術に、ディープラーニングが活用されています。
実用化の例
特許翻訳に導入されているニューラル機械翻訳(NMT)の事例があります。
まとめ:現実のさまざまな問題の解決が期待されるAIの進化
人工知能研究の世界的権威であるレイ・カーツワイル博士は、2045年に人間の脳とAI(人工知能)の能力が逆転する「シンギュラリティ(技術的特異点)」が訪れることを予言しています。AIが人間の脳を超えるかについては多くの議論がありますが、囲碁や将棋などで見られるように、限られた範囲・ルールの中では人工知能が人間の能力を凌駕していることは現実になっています。
AI自体はまだ成長期の過程にありますが、今後も研究を進めることで、日本や世界が抱える社会課題を解決し持続的な経済成長を支えるでしょう。ここで挙げた例以外にも、小売、流通、医療、金融、農業、教育など、ますます多様な分野に進出していくことが期待されます。
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