オフショア開発で評価が高いベトナム! そのメリットと他の国との違いとは?
東南アジアや南アジアへのオフショア開発は、年を追うごとに委託件数が増加しています。特に、ここ数年、人気急上昇となっているのがベトナムです。フィリピンやバングラデシュなど、アジアにある多くの国のなかでなぜベトナムに人気が集中するのでしょうか? 今回はベトナムにおけるオフショア開発の現状や委託するメリット、他のアジア諸国との違いなどをご紹介していきます。
ベトナムにおけるオフショア開発の現状
かつて中国に委託されていたようなオフショア開発は、現在、東南アジアや南アジアの国々に委託されることが多くなっています。なかでもここ数年、委託件数が急上昇しているのがベトナムです。その背景を見ていきましょう。
※ オフショア開発についての詳細は、こちらの記事をご参照ください。
中国から東南アジア、南アジアへ
オフショア開発の黎明期、委託先1位に君臨していたのが中国です。当時はコストと品質、技術力のバランスがとれており、開発人員も豊富でした。ところが中国のオフショア開発は、人件費や物価の高騰、政情の不安定さ(一党独裁による政策の偏り、市場経済の不透明さ)などの理由により衰退してしまいました。
中国に代わり、現在では東南アジアや南アジアの国々がオフショア開発の主役となっています。なかでも、一番人気なのがベトナムです。エンジニアが優秀で国民性も勤勉、コストと品質のバランスがとれていることや政情が安定し親日国であること、治安がよく安全であることなどが評価されています。委託先としての人気国ランキングは以降、フィリピン、インド、バングラデシュ、ミャンマーが続きます。
先端技術の開発に強いベトナム
上記のような強みを持つベトナムですが、先端技術の開発においてもアジア諸国を圧倒しています。オフショア開発で委託される案件はシステム開発やWebシステム開発、スマートフォンのアプリ開発などが主流ですが、ベトナムの場合にはAIやIoT、ブロックチェーンに関わる開発も増えているのです。この背景には、暗号資産(仮想通貨)の流通量が実は世界1位というような、先端技術に高い感度を持つ国民性があります。このような先端技術を自然に取り入れる柔軟な姿勢の秘密は、ベトナム政府が力を入れる教育政策にあると言われています。
年間5万人のIT技術者を輩出
ベトナムは、国を挙げてIT人材の育成に力を入れています。ベトナムでは政府の施策により153以上の教育機関でITのトレーニングコースを提供しており、工学系の卒業生輩出ランキングでは上位10ヶ国に入っています。特にIT系の技術者は年間5万人が輩出されており、この層の厚さが先端技術開発の強さを支えています。
ベトナムにオフショア開発を委託するメリット・デメリット
ここで、ベトナムにオフショア開発を委託するメリットとデメリットを簡単に整理しておきましょう。他のアジア諸国に比べて、ベトナムのどの部分が優れているのでしょうか。
メリット
IT人材が豊富でIT系の案件受託に向いている
先述したようなIT系技術者の層の厚さが、オフショア開発におけるベトナムの技術力を支えています。
開発の品質が高く価格とのバランスがとれている
アジア諸国のなかで、ベトナムの人件費は最安ではありません。ただし、品質と技術力に優れ、総合力で高い評価を受けています。
時差が2時間しかない
日本との時差が少ないので、ミーティングの開催時間に気を使う必要がほとんどありません。
日本語を理解する現地人が多い
日本語教育を取り入れている教育機関が多く、東南アジアのなかでもインドネシア、タイに続いて日本語学習者が多いのがベトナムです。また、日本の漫画やアニメなどの影響もあり、日本語に対する親密度が高いのも学習意欲を高める要因となっているでしょう。
政情が安定している
政情は安定しており、テロをはじめとする危険性は少ないと言えます。
日本から進出している企業が多い
家電メーカーやバイクメーカーなど日本から進出している企業が多く、ベトナム国民は日本に親しみを持つ人が多いと言われています。
政策的にもIT分野が優遇されている
ベトナム政府はIT人材の育成だけでなく、国内のIT企業にも積極的な支援を行っています。さらに、海外からも免税期間を設けるなどしてIT企業を誘致し、国を挙げてITによる立国を目指しています。
デメリット
急激な経済成長と物価の上昇
急激に経済成長しているので、物価の上昇とともに人件費も高騰し、コストが上がっています。
人材確保の競争が激しくなり始めている
オフショア開発を委託する企業と案件が増えたことで、優秀な人材を確保することが難しい場合があります。
転職が常態化しつつある
優秀な人材は、国内の同業者だけでなく米国やシンガポールの企業に職を求めることも多くなっています。
他の国とベトナムは何が違う?
上記のようなベトナムのメリットを踏まえ、他の国とベトナムとの違いを説明しておきましょう。
(かつての人気国)中国
中国の技術力はとても高いものですが、人件費の高騰によりコスト競争力を失ってしまいました。上記のようにベトナムの人件費も高騰しつつありますが、中国ほどではありません。また、中国には一党独裁によるカントリーリスクが内在しています。企業にとって政情の不安定さは、事業を継続するうえで脅威となります。同じ共産党一党独裁ではありますが、ベトナムでは内情がかなり違い、中国のような政情の不安定さはありません。
フィリピン
フィリピンは英語が母国語のひとつであり、オフショア開発にとっては好材料となっています。日本企業も多く進出しており、近年は政情も安定しています。
ただし、フィリピンのエンジニアはデザイナーが多く、業務システムのような開発に強いIT系技術者は少ない傾向です。ベトナムとの一番の違いは勤勉さだと言われており、ベトナム人は勤勉でよく働きますが、フィリピン人は余暇を大切にする国民性を持っています。また、フィリピンは、治安の維持が大きな問題となっています。近年、犯罪全体の発生率は低下傾向にありますが、殺人などの重大犯罪は依然として高い発生率を維持しています。
インド
技術力が高くIT系人材も多いインドですが、欧米からの受託が多いことも影響し開発費は安くありません。加えて、優秀な人材は米国系企業の支援に特化した企業に就職する傾向が強く、一般のオフショア開発向け人材は確保が難しい状況になっています。このような傾向も影響し、ベトナムに比べてIT系人材の人件費はかなり高くなっています。
バングラデシュ
ベトナム同様、国策でIT立国を目指しておりIT系人材は豊富になりつつあります。ポストベトナムとも言われていますが、インターネットを含む社会インフラの整備が急務となっています。政情不安定な部分もあり過去には外国人を狙ったテロも発生しています。しかし、開発に関わる単価は安く、政情不安改善とインフラの整備が進めばベトナムのライバルとなり得るでしょう。
ミャンマー
ベトナム、バングラデシュに続くオフショア開発期待の国がミャンマーです。ただし、近年ではクーデターにより軍事政権が復活するなど、国内に大きな政情不安を抱えています。また、インフラ整備にも課題が残ります。
ベトナムとの違いは、何と言っても政情の不安定さです。現在は企業進出がほぼできない状態で、ミャンマーから撤退する日本企業も多くなっています。加えて、ベトナムに比べて人件費は安いものの、IT系人材はまだまだ数が足りません。オフショア開発に関しては、これから発展する国だと言えるでしょう。
なぜベトナムが選ばれるのか?
ここまでの情報をまとめると、おのずとオフショア開発でベトナムが人気の理由が見えてきます。
コストだけ見ればベトナムより安価な国はある
フィリピン、バングラデシュ、ミャンマーは、コスト競争力の面でベトナムよりも優位ですが、治安や政情不安、インフラの未整備、IT技術者の少なさなどの問題をそれぞれ抱えています。
技術力だけ見ればベトナムよりも高い国がある
中国やインドは高い技術力を誇りますが、コストが高く優秀な人材は争奪戦となっています。
重要なのはコスト、技術力、リスクのバランス
政情不安で国の方針が安定しないことやテロの危険性、治安の悪さやインフラの未整備は、ビジネス以前の問題です。ベトナムがオフショア開発の委託先として人気が高い理由は、コストと技術力、リスクなど、すべてにおいてバランスがとれているからなのです。
まとめ:今後も拡大が期待できるベトナムでのオフショア開発
東南アジアや南アジアの国々にはそれぞれの状況があり、オフショア開発の委託に関しては一長一短があると言えるでしょう。そのなかでも、ベトナムはさまざまな要素のバランスがとれた国としてオフショア開発の受託数を伸ばしており、今後もこの傾向は続くものと思われます。現在開発に関わるコストや人材不足の問題でお悩みであれば、ベトナムへのオフショアを検討してみてはいかがでしょうか?
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