大手クラウドサービス会社のAWSとAzureを比較してみた
非接触ビジネスがメインとなった現在、クラウドコンピューティングは急激に増加するとともに、クラウドプロバイダーが次々と出てきました。調査会社Canalysの2021年4月に公開したレポートによると、グローバルのクラウド市場はこの1年で35%成長し、2021年第1四半期における市場規模は418億ドル(約4兆6000億円相当)と予測されています。
その中で、AWSは35%成長でシェア32%、Azureは50%成長でシェア19%となります。クラウド市場の雄であるAWSとAzureのどちらを採用するか迷っている方は多いと思います。
前回は、AWSとは?メリットから活用事例まで徹底的に解説という記事で、AWSのメリットを紹介しました。今回は代表的製品、サービス、価格モデル、顧客サポート体制を中心にAWSとAzureを比較してみました。
1. AWSって何?Azureって何?
■AWSとは?
AWSとは、Amazon Web Serviceの略で、Amazon Web Services社が2006年にリリースしたクラウドコンピューティングサービスです。現在、世界190か国以上の100万以上のアクティブユーザーが利用する市場シェア最大のクラウドサービスです。
■Azureとは?
Azureとは、マイクロソフト社が提供するクラウドコンピューティングサービスです。2010年10月にWindows Azureという名称でサービスを開始しました。2014年にMicrosoft Azureに名称変更し、現在もその正式名称が使われています。Azureはエネルギー、金融、政府、航空等の分野を得意としており、現在、140か国にアクティブユーザーが広がっています。
2. AWSとAzureの共通点とは?
■強力なクラウドコンピューティングサービス
大手クラウドベンダーとしてのAWSとAzureはどちらも、クラウドサービスの差別化のキーポイントであるコンピューティング、ストレージ、データベース、ネットワークサービスに力を入れ、他のクラウドプロバイダーより優れています。
また、どちらもリソースの管理やタスクの自動化を行いやすくするリソースグループという機能があります。リソースグループは、特にAzureでは重要な機能となります。
■豊富なクラウドソリューション
AWSもAzureも数十カテゴリーにわたって100以上のサービスを提供しており、更なるサービス充実で競い続けています。例えば、AI、ビッグデータ、分析、可視化等のカテゴリも特化したサービスを複数有しています。ただし、選択肢が多すぎるため、基本的な知識と理解がないと、それぞれのメリットを十分に活用できないこともあります。
■柔軟な課金制度
クラウドサービスの特徴は従量制の課金制度です。AWSとAzureは課金制度に共通点が多く、AWSとAzureのどちらも初期投資と無駄なコストが抑えられるという点で課金制度をメリットとしてアピールしています。
3. AWSとAzure、それぞれのメリットは?
■AWS
AWSはパブリッククラウド市場でのトップシェアを長年占めています。世界トップ市場調査社のガートナーは、「全世界におけるクラウド IaaS のマジック・クアドラント」の中で「AWSは10年以上にわたり、クラウドIaaSの市場シェアリーダーである」と評価しました。
AWSがパブリッククラウド市場で普及した理由の一つはあらゆる事業範囲をサポートする点です。2021年時点現在AWSは200弱のサービス種類を提供しており、今後も増え続けることが想定されます。また、AWSの世界中のデーターセンターのネットワークは他のクラウドベンダーより充実しています。さらにAWSは大企業向けのプロバイダーとしてポジショニングを確立するために多数のユーザーとリソースの管理を簡易化しました。
また、AWSは多様な学習目標や学習スタイルに合わせて日本語を含む16の言語でコンテンツを提供しています。アマゾンは2025年までに2900万人に無料スキルトレーニングを提供することを目標として2020 年 12 月に数億ドルを投資しました。したがって、今後、AWS認定のエンジニアコミュニティが大幅に拡大することが見込まれます。
■Azure
マイクロソフトはクラウド市場への参入が遅れた普及したWindows Server、Office、SQL Server、Sharepoint、Dynamics Active Directory、.Netなどのオンプレミスのソフトウェアを地盤にクラウド化を進める戦略で華やかに市場に現れました。Windowsや他のマイクロソフトのソフトウェアを導入している企業数は圧倒的に多く、これらのアプリケーションと密接に統合するクラウドを出せば、そのクラウドを採用することは当前だというマイクロソフトの考えは功を奏し、Azureの成功の鍵となりました。
現在、クラウドプロバイダー2番手になったAzureは急速に幅広い機能をリリースすることでAWSに挑んでいます。既存のオンプレミスへの投資を最大限に活用しながら、クラウドのメリットを活かすハイブリッドクラウドが最大の強みです。
開発者ファーストという精神で設計されたAzureはオープンソース対応に積極的に取り組んでいます。開発者が自由かつ迅速に革新できるプラットフォームを提供し、高度なアプリケーションを構築できることを期待しています。
4. AWSとAzure、それぞれのデメリットは?
■AWS
サービスが豊富である反面、価格設定が複雑になっています。AWSの予算設定サイトには変数が多すぎるため、技術知識と経験を持つ担当者でも正確な見積りが困難です。大量のワークロードを実行する大企業にとって効果的な管理はなおさら難しくなります。
■Azure
マイクロソフトは大企業向けベンダーとして長年活躍してきましたが、Azureはそれに見合ったユーザー体験を提供していないといわれています。2021年に非常に高い成長を遂げましたが、Azureは今後の競争に勝つためにはテクニカルサポート、文書化、トレーニング、広範なISVパートナーエコシステムなどの問題を解決しなければなりません。
5. AWSとAzureの使い分け方
■AWS
先述した通り、AWSはパブリッククラウドにおいて最も歴史が長いプロバイダーであり、先駆者としてユーザーに最も優れたクラウド体験を提供しています。パブリッククラウド上の新規事業なら、AWSは最も魅力的なサービスとサポートを提供できるはずです。
また、AWSは190か国にサービス展開しており、グローバル企業にとってはベストな選択肢となります。
■Azure
マイクロソフトのソフト等を利用中の企業にとって、Azureはベストな選択肢です。特にオンプレミスのアプリのクラウドへの移行、レガシーなデータセンターの拡大にあたってAzureはシームレスで迅速なサポートを提供しています。つまり、ハイブリッドクラウドを求めるモデルならAzureを選択します。
また、金融、航空、エネルギー等の業界の企業であれば、Azureは業界特化の課題解決ソリューションを揃えています。
6. まとめ
AWSとAzureについて比較し、それぞれのメリット、デメリット、使い分けを解説しました。最適なクラウドベンダーの選択は、それぞれの企業のニーズと課題で異なります。また、今後の傾向として、それぞれのベンダーの特徴を活用するために、マルチクラウド戦略を考える企業が少なくないです。
NTQはクラウド移行、クラウドベースのオンラインサービスの開発事例が多く、AWSとAzureの認定資格のエンジニアが多数在籍しています。NTQはクラウドサービスの品質を向上するべく、社内でAWSとAzureのスキルトレーニングを行うコースを定期的に開催しています。
クラウド活用やクラウドベースへのマイグレーションに関して、何か相談があれば無料で対応しますので、お問い合わせよりお気軽にご連絡ください。
また、「開発会社だから語れる」というシリーズで以下のような特定の技術関連トピックについて語るシリーズを不定期で連載しておりますので是非ご覧ください。